平成29年4月号
空き家の譲渡所得の3000万円特別控除
増加の一途をたどる空き家。税制面からもこの問題に対処するため、平成28年4月より「空き家の譲渡所得の3000万円特別控除」制度が設けられました。従来の居住用財産の3000万円控除制度では適用されなかった「被相続人の居住用財産」についても、一定の要件を満たせば3000万円の控除が認められます。その要件を確認しましょう。
◆居住用財産の3000万円特別控除とは?
通常、不動産の売却により譲渡益が生じた場合には、所得税等が課されます。
所有期間が5年を超える場合には20.315%、5年以下の場合には39.63%の譲渡税です。
売却価額:8,000万円 取 得 費:1,500万円(50年前に取得) 譲渡費用:500万円 |
譲渡所得=8,000万円-(1,500万円+500万円)=6,000万円
譲渡税=6,000万円×20.315%=1,219万円
従来から、売却した不動産がその者の居住用であるなど一定の要件を満たした場合には、譲渡所得から3,000万円の特別控除額を控除することができました。
◆被相続人が居住していた空き家も対象に!
相続などにより被相続人の居住用家屋及びその敷地を取得した個人が、一定の要件を満たす譲渡をした場合には、自己の居住用財産を譲渡したものとみなして、従来の3,000万円特別控除を適用することができます。
譲渡税=(6,000万円-3,000万円)×20.315%=609万円
◆期間の要件
(1)平成28年4月1日から平成31年12月31日までの間の譲渡であること。
(2)相続の日から3年目の年末までに譲渡すること。
◆被相続人の居住用家屋の要件
(1)相続開始の直前において被相続人の居住の用に供されていた家屋であること。
(2)昭和56年5月31日以前に建築されたものであること。
(3)区分所有建物でないこと。
(4)相続開始直前に被相続人のみが居住していたこと。
※ 居住用家屋が複数の構築物からなる場合であっても、被相続人が主として居住の用に供していたと認められる一の建築物のみが対象となります。
◆特例の対象となる譲渡
相続の時から譲渡の時まで、事業の用、貸付の用又は居住の用に供されたことがない建物およびその敷地等で、次の①②のいずれかの要件を満たす譲渡が対象となります。
(1)耐震基準に適合することが証明された建物及びその敷地、又は建設住宅性能評価書により耐震等級が1~3とされた建物及びその敷地の譲渡。
(2)相続等により取得した被相続人の居住用家屋の全部の取壊し、除却又は滅失をした後におけるその敷地の譲渡。
◆譲渡対価の額が1億円を超えるかどうかの判定
空き家の譲渡所得の3000万円控除の特例は、譲渡対価の額が1億円を超える場合には適用することができません。
1億円を超えるかどうかの判定は、以下により行います。
(1)被相続人の居住用家屋及び敷地を相続等により取得したすべての相続人の譲渡価額の合計額で判定する。
(2)相続前から(1)の相続人が所有していた共有持分に係る譲渡対価の額も含めて判定する。
(3)店舗兼住宅等及びその敷地については、店舗部分に係る譲渡対価の額も含めて判定する。(ただし、特例の対象となるのは住宅部分に係る譲渡対価の額のみ)
(4)(1)の相続人が相続の日から対象譲渡年の年末までの間に、その特例対象譲渡資産と一体として被相続人の居住の用に供されていた家屋及びその敷地の譲渡をしている場合には、その譲渡対価の額と特例対象譲渡対価の額との合計額で判定する。
(5)(1)の相続人が対象譲渡年の翌年から3年目の年末までの間に、その特例対象譲渡資産と一体として被相続人の居住の用に供されていた家屋及びその敷地の譲渡をしている場合には、その譲渡対価の額と特例対象譲渡対価の額との合計額で判定する。
◆その他注意点
・特例は、被相続人の居住用家屋と敷地等の両方を取得した個人に限り適用されます。
・相続等により被相続人の居住用財産を取得した相続人ごとに3000万円控除の適用を受けることができます。
・所有期間10年超の居住用財産に認められる譲渡所得の軽減税率を適用することはできません。
・親子や配偶者その他特別の関係にある者に譲渡した場合には適用できません。
・相続財産を譲渡した場合の取得費の特例(措法39)と併用して適用することはできません。
◆適用を受けるための手続き
譲渡をした日の属する年の翌年3月15日までに、次の書類を添付した確定申告書を提出しなければなりません。
・譲渡所得の内訳書
・被相続人居住用家屋及びその敷地等の登記事項証明書
・市町村長が発行した被相続人居住用家屋等確認書
・売買契約書の写し等
・耐震基準適合証明書又は建設住宅性能評価書の写し(家屋を取壊し等せず、譲渡する場合)