平成29年11月号
駐車場の相続税評価
ひと言で駐車場といってもその相続税評価額は、利用者や駐車場の位置、設備の有無などによって、評価方法や、小規模宅地等の減額特例の適用の判断が異なります。
形態別に評価上の取扱いを整理してみましょう。
◆駐車場の相続税評価
(1) 自宅の駐車場
土地の相続税評価額は、利用の単位となっている1画地の宅地ごとに計算をします。
通常、駐車場は雑種地として評価しますが、所有者自身が土地を使用している場合にはその全体を1画地の宅地と考えますので、居宅に隣接する自家用の駐車場は、居宅の敷地とまとめて1つの宅地として評価することになります。
自分が使用しているなど、他人に賃貸していない宅地の評価は「自用地評価額」です。
自用地評価額 = 路線価×(加算率・補正率)×地積 |
(2) 自ら運営する貸駐車場
土地の所有者が、直接駐車の契約を結ぶ駐車場も自用地評価額(100%評価額)となります。
月極めの青空駐車場はもちろん、自らコインパーキング事業を行うような場合も同様です。
このような貸駐車場は、一定期間自動車を保管することを目的とする契約であり、土地の利用そのものを目的とした賃貸借契約とは異なるためです。
(3) 他者が設備を設けて利用する駐車場
他者に一括して土地を賃貸し、賃借人の負担でアスファルトや車庫、無人駐車場管理装置などが設置され駐車場として利用される場合があります。
例えばコインパーキング業者に土地を賃貸するケースや、店舗等のお客様駐車場としてその店舗に土地を賃貸するケースなどです。
このように車庫などの施設を駐車場の利用者の費用で造ることを認めるような契約の場合には、土地の賃貸借になると考えられるため、相続税評価額の計算上、自用地評価額から賃借権相当額を控除することができます。
駐車場の評価額 = 自用地評価額 ×(1-賃借権割合) |
賃借権割合は、地上権に準ずる権利に相当すると認められるか否かにより次のaまたはbに区分されます。
a 地上権に準ずる権利と認められる賃借権
「賃借権の登記がされているもの」、「設定の対価として権利金や一時金の支払のあるもの」、「堅固な構築物の所有を目的とするもの」などの場合は、次の賃借権割合となります。例えば、土地を借受けた者が、堅牢なガレージや立体駐車場設備などを設けて使用する場合です。
賃借権の残存期間 | 5年以下 | 5年超 10年以下 |
10年超 15年以下 |
15年超 |
割合 | 5% | 10% | 15% | 20% |
b a以外の賃借権
土地を借受けた者がアスファルトや車止めなど堅固でない構築物を設置して使用している場合、例えば、業者の負担でアスファルト、機械等が設置されたコインパーキングなどは次の賃借権割合となります。
賃借権の残存期間 | 5年以下 | 5年超 10年以下 |
10年超 15年以下 |
15年超 |
割合 | 2.5% | 5% | 7.5% | 10% |
(4) アパート、マンションの駐車場
駐車場がアパートやマンションの敷地と隣接しており、かつ、駐車場の利用者がその入居者のみである場合には、駐車場はアパートやマンションと一体として貸し付けられていると考えられるため、全体を一つの利用単位として貸家建付地として評価します。
貸家建付地=自用地評価額×(1-借地権割合×借家権割合) |
しかし、駐車場が道路で隔たれているなど隣接していない場合や、アパートやマンションの入居者以外の者も利用している場合には、アパートやマンションの敷地と駐車場の利用単位は別とされ、駐車場は自用地評価額(上記(2)の評価)となってしまいます。
◆駐車場と小規模宅地等の減額特例
(1) 自宅の駐車場
被相続人の居住用宅地については、330㎡を限度に評価額から80%を控除することができます。
前述のとおり、居宅と自家用駐車場が隣接している場合には、全体を居住用宅地と考えるため、駐車場部分も含めて小規模宅地等の減額の対象にすることができます。
しかし、道路等で居宅の敷地と分断されているような駐車場は、居住用宅地とは別の宅地となり特例を適用することができません。
(2) 貸駐車場、または他者が設備を設けて利用する駐車場
被相続人の貸付事業用宅地については、200㎡を限度に評価額から50%を控除(他の宅地について限度面積まで適用されている場合を除きます。)することができます。
ただし土地が、建物や構築物の敷地であることが条件です。
したがって、特に設備のない青空駐車場は特例を適用することができません。砂利敷きの駐車場も、それが客観的に構築物として管理されていると認められる状態でなければ適用されないことがありますので注意が必要です。
(3) アパートマンションの駐車場
前述のとおり、アパートやマンションに隣接する入居者専用駐車場は、全体が貸家建付地として評価されるため、駐車場部分も含めて貸付事業用宅地として小規模宅地等の減額の対象にすることができます。