平成29年10月号
広大地評価 改正!
改正評価通達が公表され、広大地の評価が廃止、新たな評価方法として「地積規模の大きな宅地の評価」が定められました。
これにより、適用要件は明確化されましたが、多くの広大地の評価額が増加することになります。
どのように変わるのか確認していきます。
◆現行の「広大地評価額」(平成29年12月まで)
面積が大きい土地は、開発行為を行おうとすると道路や公園などの負担が必要になることがあります。その負担分(潰れ地)を考慮して広大地評価が定められていました。
<評価方法>
広大地の評価額=正面路線価×広大地補正率(注)×地積 |
(注)広大地補正率=0.6-0.05× |
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(下限0.35) |
<主な要件>
(1) その地域における標準的な宅地の地積に比して著しく地積が広大であること
・・・自治体の定める開発許可を要する面積基準以上であれば、原則「著しく地積が広大」であるとされます。面積基準は、土地が三大都市圏の市街化区域にあれば500m2以上、それ以外の地域にあれば1,000m2以上などと定められています。
(2) 開発行為を行う場合、公共公益的施設用地が必要であること
・・・たとえ著しく地積が広大な土地であっても、間口が広かったり複数道路に接しているなど、戸建分譲をしたとしても、道路等の負担の必要がないと認められる場合には「公共公益的施設用地が必要」とは認められません。
(3) 大規模工場用地に該当するものではないこと及びマンション等の敷地用地に適しているものではないこと
・・・その土地が大規模工場用地である場合や、近隣の状況などからマンション用地に適していると認められる場合には、戸建分譲することは合理的ではないことから広大地評価をすることができません。
<具体例>
広大地評価額
200,000円×※0.56×800m2=8,960万円
※広大地補正率=0.6-0.05× |
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=0.56 |
広大地の評価を適用することができれば、適用しない場合に比べ評価額が42%~65%減額され、相続税や贈与税の負担を大きく減らすことが可能となります。
しかし、次のような問題点が指摘されていました。
(1)土地の形状が考慮されない
現行の広大地評価は、路線価と地積からのみ計算され、土地の形状を一切考慮していません。
また、実際に生じる潰れ地の大きさも考慮されず、取引価額と相続税評価額が乖離する場合が生じてしまいます。
(2)判断が難しい
マンション適地であるかどうか、道路を設けず袋地状の土地としての分譲が合理的であるかどうかなど、納税者はもちろん税理士だけでは判断できない事例が多くあり、適用の可否について税務当局との争いも絶えませんでした。
◆新たな「地積規模の大きな宅地」(平成30年1月以降)
「広大地の評価」に代わり「地積規模の大きな宅地の評価」が新設され、上記の問題点の解消が図られました。
通常の宅地評価、つまり、奥行距離、間口距離、不整形などに応じた補正を行った上で、下記の「規模格差補正率」を乗じて評価します。
<規模格差補正率>
<具体例>
地積規模の大きな宅地の評価額
200,000円×0.91(※1)×0.98(※2)×0.78×800m2(※3)=112,296,000円
※1奥行価格補正率
※2奥行長大補正率
※3規模格差補正率
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×0.8=0.78(小数点以下2位未満切捨) |
◆現行の広大地評価を適用するなら平成29年内贈与を!
広大地評価の対象となることが確実な土地で、改正後は評価額が大きく増加してしまうものは、平成29年末までに贈与を行い相続時精算課税制度を利用することで、改正による相続税の上昇を回避することができます。
時間はありませんが該当する方はご検討ください。