平成29年2月号
株式投資にかかる税金を節約!
株式投資を行う際に、銘柄の選定以外に頭を悩ませるのが税務処理の選択という人も多いのではないでしょうか。我が国の証券税制は複雑で、口座開設や確定申告の時に、いくつかのパターンの中からより良い方法を自分自身で選ばなくてはなりません。
◆株式投資にかかる税金
1)株式の譲渡益
譲渡益発生の都度、または確定申告の時に、次の税金が課税されます。
所得税 | 復興特別所得税 | 住民税 | 合 計 | |
上場株式等 | 15% | 0.315% | 5% | 20.315% |
非上場株式等 | 15% | 0.315% | 5% | 20.315% |
2)株式の配当金
配当金を受け取る際に、次の税金が源泉徴収されます。
所得税 | 復興特別所得税 | 住民税 | 合 計 | |
上場株式等※ | 15% | 0.315% | 5% | 20.315% |
非上場株式等 | 15% | 0.42% | - | 20.42% |
※発行済株式総数の3%以上を保有する個人株主は非上場株式と同様です。
◆口座開設は3パターン。どの口座がいい?
証券会社等で新たに口座を作成する際には、次の3種類の口座から選ぶことになります。
一般口座 | 取引の都度、売買の報告書が届く。 確定申告の際は、年間の取引を自ら集計して、譲渡所得を計算しなければならない。 |
特定口座 (源泉有) |
証券会社等が、年間の取引報告を作成する。 譲渡益が生じた場合には所得税等が源泉徴収されるため、確定申告をする必要がない。 |
特定口座 (源泉無) |
証券会社等が、年間の取引報告を作成する。 譲渡益が生じた場合には、報告書を基に確定申告して所得税等を納める必要がある。 |
まず手間だけでなく、税務上の有利性を考えても「一般口座」を選択するメリットはないといってもよいでしょう。
「特定口座」なら、一年間の成績を証券会社等が出してくれるため、自ら集計する必要がありません。
特定口座の中では、確定申告の手間だけで比べれば断然「源泉徴収有口座」に軍配が上がります。しかし、税務上の有利性については、自身の立場によって変わってきます。
専業主婦やリタイアされた方など、所得が株式の譲渡所得しかないような人は通常「源泉徴収有口座」が有利になります。どんなに多額の売却益があっても確定申告の必要がないため所得としてカウントされません。したがって、配偶者などの扶養となることができますし、高額な国民健康保険料等が課されることもありません。
これに対し、サラリーマンなどの給与所得者は、「源泉徴収無口座」が有利になることがあります。年収2000万円以下の給与所得者は、給与所得・退職所得以外の所得が20万円以下の場合、確定申告する必要がないためです。
つまり、年間の株式の譲渡益が20万円以下なら、所得税は課税されないことになるのです。20万円を超えた場合には確定申告しなければなりませんが、会社の社会保険に加入していれば、健康保険料が増加する心配もありません。
◆損益通算と繰越控除
一般口座であっても特定口座であっても、株式の譲渡損が生じた場合には、確定申告することにより他の株式や特定口座の譲渡益と損益通算することができます。
(ただし、平成28年分以後は上場株式グループと非上場株式グループとの総益通算はできなくなりました。)
また、損益通算しても控除しきれない譲渡損は、その後3年間繰越して譲渡益から控除することができます。ただし、繰越控除するためには譲渡益を確定申告しなければならないため、専業主婦などは配偶者の扶養から外れなければならなくなることがあるので注意が必要です。
◆配当金の確定申告はする?しない?
上場株式等の配当金の確定申告の取り扱いは、通常、以下の3パターンから選択することになります。
申告不要 | 配当金の受取時、既に所得税等が源泉徴収されているため、そのまま課税関係を終了する。 |
総合課税 | 給与所得や事業所得など他の所得と合算して所得税を計算する。配当控除が受けられるため一定の所得以下であれば税負担が少なくなる。 |
分離課税 | 分離課税を選択すると、株式の譲渡損失や繰越損失との通算が可能となる。 |
総合課税を選択すると、課税所得(総所得から所得控除を差し引いた金額)が330万円以下の場合の税率は7.2%、695万円以下の場合の税率は17.41%であるため、源泉所得された20.315%より低く、税金の還付が見込めます。
一方、株式の譲渡損や繰越損失がある場合には、分離課税を選択すると、配当所得と譲渡損失が相殺・控除されるため、源泉徴収された20.315%が還付されます。ただし、課税所得695万円以下の人で翌年以後譲渡益が見込まれる場合には、あえて配当金については総合課税を選択(7.2%または17.41%の課税)して譲渡損を繰越し、来年の譲渡益から控除して20.315%の還付を狙うのも良いでしょう。
株式の譲渡損や繰越損失がない高所得者は、多額の配当を受けた被扶養者となっている専業主婦などは、申告不要を選択するのが通常一番有利となります。