平成28年4月号
アパートか駐車場か
空き地などの遊休地の有効活用を考えた場合、アパート等の賃貸用建物を建築すべきか、駐車場として貸し出すべきかという選択に迫られる場合があります。収益性ではアパート経営に軍配が上がりますが、建築に多額の資金が必要であることを考えると、低リスクで手軽に始められる駐車場経営も大きな魅力です。資金計画や自己利用の可能性なども考えながらの判断になろうかと思いますが、税務面ではどのような違いがあるのか、確認しておきましょう。
◆駐車場は固定資産税が高い?
固定資産税は土地や建物の固定資産税評価額に1.4%(標準税率)を乗じて計算されます。また、都市計画区域内にある土地、建物については別途0.3%(制限税率)の都市計画税が課税されます。
○アパート・マンション建築の場合
空き地にアパート等を建築するとどうなるでしょうか。住宅として利用されている土地は、200㎡までの部分の課税標準が6分の1になる小規模住宅用地の減免特例が適用されます。1戸につき200㎡なので6室のアパートなら1,200㎡までが減免の対象です。実際には空き地でも、急激な税負担増加を避けるための負担調整措置が施されている場合がありますので、必ずしも6分の1になるとは限りませんが、4分の1前後への負担減は期待できます。
一方で建築した建物についても固定資産税の対象となります。こちらも新築後3年間(耐火建築物は5年間)は固定資産税が2分の1になる減額制度が設けられています。
○駐車場経営の場合
空き地を駐車場にしても、基本的に土地の固定資産税の額に変化はありません。原則通りの固定資産税が課税されます。なお、自治体によっては条例で独自の減免を設けている場合があり、東京都23区などでは現在、非住宅用地のうち400㎡以下の部分の固定資産税を20%減免する措置を設けています。
なお、アスファルトやフェンスなどを設置した場合には、構築物として固定資産税(償却資産税)の対象となります。
◆駐車場の相続税評価額
土地の相続税評価額は、通常、国税局の定めた路線価を形状等に応じて補正し、その金額に地積を乗じて求めます。
○アパート・マンション建築の場合
空き地にアパート等を建築すると、土地の相続税評価額が下がります。建物を賃貸するとその敷地である土地についても、賃借人の権利が発生すると考えるためです。このような貸家建付地の評価額は、地域ごとに定められた借地権割合に応じて、更地価額の73%~91%相当額となります。
○駐車場の場合
駐車場用地の相続税評価額は基本的に空き地と変わりません。路線価により計算した更地価額の100%が相続税評価額となります。
ただし、土地を借りた駐車場利用者が車庫などの施設を造るような契約の場合には、賃借権が発生していると考えられるため賃借権相当額を控除することができます。
(1) 地上権に準ずる権利と認められる賃借権
賃借権の登記がされているもの、設定の対価として権利金や一時金の支払のあるもの、堅固な構築物の所有を目的とするものなどが該当します。具体的には、土地を借受けた駐車場業者等が立体駐車場設備などを設けて駐車場業を行う場合です。この場合の賃借権は、更地価額に次の割合を乗じた金額となります。
賃借権の残存期間 | 5年以下 | 5年超 10年以下 |
10年超 15年以下 |
15年超 |
割合 | 5% | 10% | 15% | 20% |
(2) (1)以外の賃借権
土地を借受けた駐車場業者等がアスファルトや車止めなど堅固でない構築物を設置して駐車場業を行っている場合、例えば業者の負担でアスファルト、機械等が設置されたコインパーキングなどが該当します。この場合の賃借権は、更地価額に次の割合を乗じた金額となります。
賃借権の残存期間 | 5年以下 | 5年超 10年以下 |
10年超 15年以下 |
15年超 |
割合 | 2.5% | 5% | 7.5% | 10% |
◆小規模宅地等の減額(50%減額)は適用されるか?
被相続人が貸付事業を行っていた土地は、相続後10ヶ月間貸付事業を継続することで評価額から50%(他の土地と合わせて200㎡限度)相当額を減額することができます。
○アパート・マンションの場合
アパート等の敷地は貸付事業用宅地に該当するため、50%減額の対象となります。
○駐車場の場合
駐車場の場合にはどのような設備を設けているかで50%減額の適用の可否が分かれます。50%減額ができるのは、最低でもアスファルトやコンクリートなどの構築物が施されている場合で、青空駐車場や砂利敷き駐車場の場合には50%減額を適用することはできません。
以上のように税務面でも、駐車場経営はアパート経営に比較して不利な取り扱いが多くあります。特に青空駐車場などは税金の軽減がほぼありません。デメリットを十分理解した上で行っていただければと思います。