平成28年2月号
低金利時代こそ確定拠出年金!
1万円札の需要が増えています。マイナンバー制度の導入や低金利を背景に、お金がタンス預金に向かっているようです。更に、日銀によるマイナス金利政策導入を受け、各銀行も一斉に預金金利を引下げ始めました。普通預金に至っては年0.001%、つまり10万円を1年間預けてようやく1円です。もうお金の持って行き場がないですね。
それなら確定拠出年金を利用して高利回りを狙ってみてはいかがでしょうか。といっても確定拠出年金の運用による利益獲得を奨めているわけではありません。税制を利用した税金の戻りを投資と考えると高利回りになるのです。
◆確定拠出年金の利回りは15%~55%?
確定拠出年金では、支払った掛金の全額が所得控除とされ、所得税や住民税が減少します。これを利子や配当を受けるのと同様と考えると、所得に応じた所得税率15%~55%が単年度の利回りになってしまうのです。もっとも掛金の総額は毎年増えいきますが、税金は1年間の掛金分しか軽減されないので、長期になればなるほど利回りは低下していきますが、それでも定期預金とは雲泥の差です。
<課税所得250万円(給与収入約530万円)の場合>
運用期間 | 年間掛金 | 払込総額 | 確定拠出年金 | 定期積立 |
税金軽減額 | 利息(0.5%) | |||
20年 | 250,000円 | 5,000,000円 | 1,000,000円 | 215,417円 |
30年 | 7,500,000円 | 1,500,000円 | 483,496円 |
<課税所得1000万円(給与収入約1400万円)の場合>
運用期間 | 年間掛金 | 払込総額 | 確定拠出年金 | 定期積立 |
税金軽減額 | 利息(0.5%) | |||
20年 | 250,000円 | 5,000,000円 | 2,150,000円 | 215,417円 |
30年 | 7,500,000円 | 3,225,000円 | 483,496円 |
◆確定拠出年金は誰でも加入できる?
確定拠出年金は、年齢が60歳未満で国民年金や厚生年金保険料を支払っている人が対象となります。2017年からは専業主婦など被扶養者となっている人や公務員など共済年金に加入している人も加入できるようになります。なお、確定拠出年金には「個人型」と「企業型」があり、それぞれの現在の加入要件は次のようになっています。
個人型 | 企業年金(厚生年金基金や確定給付企業年金)及び企業型確定拠出年金に加入していないこと (2017年以降はこれらに加入している場合でも個人型確定拠出年金に加入できるようになります。) |
企業型 | 勤務先が確定拠出年金を導入していること (掛金は会社が負担しますが、規約に定めることにより従業員も拠出することができます。ただし、合計額が拠出限度額を超えることはできません。) |
◆確定拠出年金の仕組み
国民年金や厚生年金といった公的年金制度は現役世代が高齢世代を支える仕組みで、支払った年金保険料は基本的に高齢者に回ります。2010年には現役2.8人で高齢者1人を支えていましたが、2050年には現役1.5人で高齢者1人を支えることになると言われています。
これに対し確定拠出年金は、自分が将来もらう年金を現役時代に自分で管理運用していこうというもので、国民年金、厚生年金に上乗せして加入することになります。将来もらえる年金額は自身の運用次第、自己責任です。給付金の受け取り開始時期は通常60歳から70歳までの間で本人が選択します。年金で受け取るか一時金で受け取るかも選択することができます。
窓口は証券会社、銀行、保険会社などの金融機関で、口座を開設すればネット上で運用商品を選んだり運用実績を確認することができます。各金融機関が用意した様々な商品の中から、国内型、国外型、株式運用、債券運用など自分に合ったものを選びます。中には運用リスクや運用知識の必要性から、確定拠出年金を敬遠されている方もいるかと思います。実は、定期預金や年金保険などで運用する元本確保型の商品も存在しますので、収益は期待できませんが、少ないリスクで気軽に運用することもできるのです。
◆掛金はいくら?(2016年まで)
加入する公的年金や企業年金により、個人型、企業型それぞれ月額掛金の上限額が次のように定められています。
個人型 | 国民年金に加入している | 最大68,000円 |
厚生年金に加入している | 最大23,000円 | |
企業型 | 企業年金等※を導入していない | 最大55,000円 |
企業年金等※を導入している | 最大27,500円 |
※厚生年金基金、確定給付企業年金
◆その他にもこんな税務メリットが
株式や預金による運用では、通常20%の税金が課税されますが、確定拠出年金では運用により生じた収益はすべて非課税とされます。また、将来受け取る給付金については、年金受取なら雑所得として公的年金等控除、一時金受取なら退職所得として退職所得控除され、税負担が抑えられる取り扱いとなっています。
◆注意すべきこと
良いこと尽くめの確定拠出年金でも注意しなければならないことはあります。60歳までは原則解約できないことです。この点は、老後の保障という制度の仕組みや、税制による優遇でそれをバックアップしていることを考えれば仕方がないことなのでしょう。