平成28年1月号
財産債務調書制度、始まる!
今年も確定申告の時期が近づいてきました。今回の申告から「財産債務調書」制度がスタートします。昨年以前の確定申告でも、年間の所得金額が2,000万円を超える方は「財産及び債務の明細書」の提出が義務付けられていましたが、平成27年分の確定申告より、名称だけでなくその提出義務者の範囲、罰則規定などが変更されます。今一度その内容について確認しておきましょう。
◆「財産債務調書」を提出しなければならない人
所得税の確定申告書の提出義務がある方で、次の①及び②のいずれにも該当する方は、その年の翌年3月15日までに「財産債務調書」を提出しなければなりません。
(改正後、最初の提出期限は平成28年3月15日です。)
① その年分の所得金額が2,0000万円を超える。 ② その年12月31日時点の 財産の価額の合計額が3億円以上である。 又は 一定の有価証券等の価額の合計額が1億円以上である。 |
平成26年分の確定申告までは、上記①の基準を満たしただけで「財産及び債務の明細書」を提出しなければなりませんでしたので、今回の改正で②の基準が追加されたことによりその提出義務者の範囲が狭くなったことになります。
なお、「財産債務調書」を提出する際には、財産債務調書に記載した財産の価額及び債務の金額をその種類ごとに合計した金額を記載した「財産債務調書合計表」を添付する必要があります。
◆記載事項
財産債務 の 区 分 |
種 類 | 所 在 | 数 量 |
(上段は有価証券等の取得価額) 財産の価額又は債務の金額 |
備 考 |
(1) | (2) | 円 | |||
(3) 円 | |||||
円 | |||||
円 |
(1) 「財産債務の区分」欄
次の①~⑱までの区分に応じて、この順序で記載します。
①土地、②建物、③山林、④現金、⑤預貯金、⑥有価証券、
⑦匿名組合契約の出資の持分、⑧未決済信用 取引等に係る権利、⑨未決済デリバティブ取引に係る権利、
⑩貸付金、⑪未収入金、⑫書画骨とう及び 美術工芸品、⑬貴金属類、⑭その他の動産、⑮その他の財産、
⑯借入金、⑰未払金、⑱その他の債務
※⑫、⑭の財産については10万円未満ものの記載は不要です。
(2) 「種類」欄
財産債務の細目を記載します。ただし、土地、建物、山林、現金、貸付金、未収入金、借入金、未払金については記載する必要はありません。
(具体例)
・預 貯 金:当座預金、普通預金、定期預金等
・有価証券:上場株式、非上場株式、公社債、投資信託、
特定受益証券発行信託、貸付信託等及び銘柄名
(3) 「財産の価額又は債務の金額」欄
財産については、12月31日における「時価」又は時価に準ずる価額として「見積価額」を記入することとされています。
現金預金の場合は年末残高を記入し、上場有価証券については原則として年内最終の取引価額(終値)を記載すればよいでしょう。
土地や建物については、時価を算定することはなかなか難しいことかと思います。正確に行うには不動産鑑定士などに依頼しなければなりません。そこで、「見積価額」による算定が一般的になると考えられます。具体的には、その年度の「固定資産税評価額」を使用するのが最も便利です。その他、取得価額を時点修正した価額や、財産債務調書を提出するまでに譲渡している場合にはその譲渡価額によることもできます。建物については、取得価額から経過年数に応じた償却費の額を控除した金額(帳簿価額)によることもできます。
債務については、12月31日における金額を記入します。
◆提出しない場合には罰則、提出すると軽減
改正前の財産及び債務の明細書は提出義務はあっても罰則規定は特にありませんでした。新たな財産債務調書では記載された財産債務、又は記載がなかった財産債務に関して、所得税・相続税の申告漏れが生じた場合には、次のように過少申告加算税等の軽減又は加重が行われます。
① 財産債務調書に記載がある・・・その財産債務について申告漏れが生じた場合、加算税が5%軽減される。
② 財産債務調書に記載がない・・・その財産債務について申告漏れが生じた場合、加算税が5%加重される。
◆国外財産調書の提出も忘れずに
平成25年より、その年12月31日において5,000万円超の国外財産を有する者は「国外財産調書」の提出が義務付けられています。提出がない場合などの罰則規定も「財産債務調書」と同様です。海外にある不動産、海外の銀行や証券会社の口座を有している方は注意が必要です。
なお、国外財産調書に記載した国外財産については、財産債務調書への記載は要しないこととされています。