平成27年12月号
平成28年度税制改正大綱
平成28年度の税制改正の原案となる「平成28年度税制改正の大綱」が閣議決定されました。法人減税や消費税の軽減税率が中心で、資産税に関しては大きな改正項目は見受けられませんでした。
~所得税(住民税)~
◆空き家に係る譲渡所得の特別控除の特例(新設)
改 正 案(平成28年4月1日~平成31年12月31日) |
相続の開始の直前において被相続人の居住の用に供されていた下記(1)の家屋及びその敷地の用に供されていた土地等を相続により取得した個人が、下記(2)の譲渡をした場合には、譲渡所得の金額の計算上、居住用財産の譲渡所得の 3,000 万円特別控除を適用することができることとされます。 (1) 家屋の要件 1) 相続開始直前において被相続人の居住の用に供されていたこと 2) 被相続人以外に居住をしていた者がいなかったこと 3) 昭和56年5月31日以前に建築されたもの(区分所有建物を除く)であること (2) 譲渡の要件 1) 次のいずれかの譲渡で、相続時から譲渡時まで事業用、貸付用、居住用に供していないこと イ 上記(1)の家屋※の譲渡またはその敷地の用に供されている土地等の譲渡 ※地震に対する安全性に係る規定等に適合するものであること ロ 上記(1)の家屋を除却した後、その敷地の用に供されていた土地等の譲渡 2) 相続以後3年を経過する日の属する年の12月31日までに譲渡すること 3) 譲渡対価の額が1億円以下であること |
◆住宅の三世代同居改修工事等に係る住宅借入金等を有する場合の所得税額の特別控除(新設)
改 正 案(平成28年4月1日~平成31年6月30日) |
個人が、居住用家屋について一定の「三世代同居改修工事等」をして、居住の用に供した場合には、その三世代同居改修工事等のための住宅借入金等(注)の年末残高(1,000万円を限度)の区分に応じ、それぞれ次に定める割合に相当する金額の合計額が所得税額から控除されます。(控除期間は5年) (1) 次の三世代同居改修工事に係る工事費用(250万円を限度)に相当する住宅借入金等の年末残高・・・2% イ調理室、ロ浴室、ハ便所、ニ玄関のいずれかを増設する工事(改修後イからニのいずれか2つ以上が複数となるものに限られます。)であって、その工事費用(補助金等の額を控除した金額)の合計額が50万円超のもの (2) (1)以外の住宅借入金等の年末残高・・・1% (注) 償還期間5年以上の住宅借入金等に限られます。 |
◆既存住宅に係る三世代同居改修工事をした場合の所得税額の特別控除(新設)
改 正 案(平成28年4月1日~平成31年6月30日) |
個人が、居住用家屋について一定の「三世代同居改修工事等(注1)」とをして、居住の用に供した場合には、その三世代同居改修工事等に係る標準的な工事費用相当額(注2)(250万円を限度)の10%に相当する金額がその年分の所得税額から控除されます (注1) イ調理室、ロ浴室、ハ便所、ニ玄関のいずれかを増設する工事(改修後イからニのいずれか2つ以上が複数となるものに限られます。)であって、その工事費用(補助金等の額を控除した金額)の合計額が50万円超のもの (注2) 三世代同居改修工事の改修部位ごとに標準的な工事費用の額として定められた金額に、その三世代同居改修工事を行った箇所数を乗じて計算した金額 |
◆特定の居住用財産の買換えの場合の長期譲渡所得の課税の特例(延長)
特定のマイホーム(居住用財産)を売却し、代わりのマイホームに買い換えた場合には、一定の要件のもと、譲渡益に対する課税を将来に繰り延べることができます。
同特例が2年間延長されることになりました。
適用期限 |
~平成29年12月31日まで |
◆居住用財産の買換え等の場合の譲渡損失の損益通算及び繰越控除(延長)
マイホーム(旧居宅)を売却し、新たにマイホーム(新居宅)に買い換えた場合において、旧居宅の譲渡による損失(譲渡損失)が生じたときは、一定の要件のもと、その譲渡損失をその年の給与所得や事業所得など他の所得から控除(損益通算)することができます。さらに、損益通算を行っても控除しきれなかった譲渡損失がある場合には、譲渡年の翌年以後3年内に繰り越して控除(繰越控除)することができます。
同特例が2年間延長されることになりました。
適用期限 |
~平成29年12月31日まで |
◆スイッチOTC薬控除(医療費控除の特例)(新設)
従来の医療費控除では、医療費の総額が通常10万円を超えないと医療費控除の適用はありませんでした。今回の改正で、適切な健康管理の下で医療用医薬品からの代替を進める観点から、市販薬に関しては、年間の支払額の合計額が1万2千円を超える場合に医療費控除が適用されることになります。
改 正 案(平成29年1月1日~平成33年12月31日) |
健康の維持増進及び疾病の予防へのための次の(1)~(5)の取組を行う個人が、自己又は生計一親族に係るスイッチOTC医薬品(注)の購入の対価を支払った場合において、その年中に支払ったその対価の額(保険金、損害賠償金等により補塡される部分の金額を除きます。)の合計額が1万2千円を超えるときは、その超える部分の金額(8万8千円を限度)がその年分の総所得金額等から控除されます。(従来の医療費控除との選択適用) (1)特定健康診査 (2)予防接種 (3)定期健康診断 (4)健康診査 (5)がん検診 (注) スイッチOTC医薬品とは、要指導医薬品及び一般用医薬品のうち、医療用から転用された医薬品(類似の医療用医薬品が医療保険給付の対象外のものを除く。)をいいます。 |
◆建物附属設備及び構築物の減価償却方法(廃止)
従来、建物附属設備及び構築物については減価償却方法として定額法又は定率法のいずれかを選択することができましたが、定額法のみとなり取得当初に多額の償却費を計上することができなくなりました。(法人税についても同様)
現 行 制 度 | 改正案(平成28年4月1日以後取得) | ||||||||||
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~法人税~
◆法人税率(引き下げ)
昨年に引き続き、法人税の税率が引き下げられることになります。
現 行 制 度 | 改正案 | ||||||||||||||||||||||||||||||
※国・地方を合わせた率 |
※国・地方を合わせた率 |
◆交際費の損金不算入制度(延長)
交際費の損金不算入制度が2年間延長されるとともに、「1人当たり5,000円以下の飲食費を損金不算入制度から除外する特例」及び「資本金等の額が1億円以下の法人が支出した交際費等のうち800万円までの金額を損金の額に算入できる特例」も2年間延長されることになりました。
適用期限 |
~平成30年3月31日まで |
◆中小企業者等の少額減価償却資産の取得価額の損金算入の特例(延長)
中小企業者等が、取得価額が30万円未満である減価償却資産を取得などして事業の用に供した場合には、一定の要件のもとに、その取得価額に相当する金額を損金の額に算入することができます。
同特例が従業員数1,000人超の法人を除外した上で2年間延長されることになりました。
適用期限 |
~平成30年3月31日までの取得 |
~消費税~
平成29年4月1日からの消費税引き上げに合わせて、飲食料品等に対する軽減税率が導入されることになりました。これに伴い、事業者の消費税額の計算を適正に行うためのインボイス制度を導入し、その移行期間は現行の請求書等保存方式を基本的に維持しつつ、区分経理に対応するための措置が講じられます。
改 正 案(平成29年4月1日~) | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
1.軽減対象課税資産・・・税率8% (1) 飲食料品(食品表示法に規定する食品(酒税法に規定する酒類を除く。))※外食サービスを除は除かれます。 (2) 定期購読契約が締結された週2回以上発行される新聞 2.消費税の計算方法
※経過措置
・軽減対象課税資産の課税仕入高=課税仕入高×下記割合 ↕どちらかのみ
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~その他~
◆特定認定長期優良住宅または認定低炭素住宅の所有権保存登記等に対する登録免許税の税率の軽減(延長)
認定長期優良住宅、認定低炭素住宅の所有権保存登記、所有権保存登記に対する登録免許税
・所有権保存登記 ・・・・・・・・1/1000(本則4/1000)
・所有権移転登記(売買)・・・1/1000※(本則20/1000) ※戸建の認定長期優良住宅については2/1000
同特例が2年間延長されることとなりました。
適用期限 |
~平成30年3月31日まで |
◆新築住宅に係る固定資産税の税額の減額(延長)
新築建物は、120㎡までの部分については、次の年度分の固定資産税が2分の1減額されます。
・3階建て以上の耐火・準耐火建築物・・・5年度分(認定長期優良住宅については7年度分)
・上記以外の住宅 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・3年度分(認定長期優良住宅については5年度分)
同特例が2年間延長されることになりました。
適用期限 |
~平成30年3月31日まで |
◆新築住宅特例適用住宅用土地に係る不動産取得税の減額の住宅新築までの年数の緩和措置(延長)
新築住宅の敷地である土地については、その取得の日から3年以内に建物を新築した場合には、不動産取得税の減額措置が適用されます。
同特例が2年間延長されることになりました。
適用期限 |
~平成30年3月31日まで |
◆認定長期優良住宅に係る不動産取得税の課税標準の特例(延長)
認定長期優良住宅を新築した場合には、その固定資産税評価額から1,300万円(一般の場合は1,200万円)を控除した金額に対して不動産取得税が課税されます。
同特例が2年間延長されることになりました。
適用期限 |
~平成30年3月31日まで |