平成27年11月号
空家は固定資産税が増える?
10月26日、横須賀市による行政代執行により所有者不明の空家が取り壊されました。これは今年5月に施行された「空家等対策の推進に関する特別措置法」に基づいて行われたもので、市は建物の倒壊など著しく危険となる恐れがあると判断し「特定空家等」に指定していました。
総務省が公表した平成25年度の統計によると、全国の空家件数は820万戸で、これは総住宅数の13.5%を占めます。実に住宅の7.5件に1件が空家ということになります。しかもその件数は加速度的に増加しており、2040年には空家率は43%に達する(野村総合研究所)とも言われています。
適切な管理が行われていない空家は防災、衛生、景観等の地域住民の生活環境に深刻な影響を及ぼします。そこで特に問題のある空家を「特定空家等」として適切な施策を行うことを目的に同特別措置法が施行されました。
◆特定空家等とは
次の状態にある空家は「特定空家等」として判断される可能性があります。
① 倒壊等著しく保安上危険となる恐れのある状態
② 著しく衛生上有害となる恐れのある状態
③ 適切な管理が行われないことにより著しく景観を損なっている状態
④ その他周辺の生活環境の保全を図るために放置することが不適切である状態
◆特定空家等に対する行政措置の流れ
所有する建物が突然「特定空家等」として厳しく処分されるわけではありません。その措置方法は国土交通省が設けたガイドラインをもとに、各自治体が条例で定めることになっています。その流れは以下のとおりです。
◆固定資産税等の住宅用地特例の対象除外
固定資産税及び都市計画税は、毎年1月1日時点の土地建物の所有者に対して課税されます。固定資産税等の課税標準は原則として、その土地、建物の固定資産税評価額とされますが、住宅の敷地とされている土地の固定資産税については1戸につき200㎡までの部分の課税標準が6分の1(都市計画税については3分の1)とされる住宅用地の特例があります。この特例が空家増加の一因とも言われています。空家を取り壊して更地にするとこの特例が使えなくなるためです。固定資産税が6倍になることを避けるため、どんなに老朽化していても取り壊すことなく建物を残そうとする方が多いのです。
空家等対策特別措置法により、所有する建物が特定空家等に指定され、建物の除却、修繕、立木竹の伐採など生活環境の保全を図るために必要な措置に関する助言や指導があったにもかかわらずその措置を怠り、その後行政から勧告がなされた場合には「固定資産税等の住宅用地特例」が適用されなくなります。つまり、更地と同様の課税が行われます。逆に言うと、助言、指導があった段階で十分な対応を取れば、固定資産税の負担増を避けることができます。
◆まだまだ問題山積みの空家
空家等対策特別措置法により、市町村はある程度空家を強制的に処分することが可能となりました。政府は平成28年度税制改正に、親から相続した空家を3年以内に耐震改修や解体をして売却した場合には、譲渡所得から3,000万円を控除する制度を盛り込むことを検討しています。しかし、こういった政策をもってしても、増え続ける空家を止めることは難しいと言われています。市町村も、代執行による空家の処分費用を所有者に請求しても回収できるとは限らないため、代執行をすることには及び腰です。
空家所有者としては、少なくとも特定空家等に指定されないよう放置せず最低限の管理をしていくことが必要です。