平成26年1月号
賢いアパートマンションの確定申告
アパート、マンションなど不動産賃貸を個人で行っている方は、年に1度、確定申告をしなければなりません。投資として考えれば、少しでも所得税の軽減を減らして利回りを上げたいところです。そのために確定申告をどのように行うのが良いのか、確認してみたいと思います。
◆青色申告を行う
まずは「青色申告」を行うことです。青色申告ではしっかりと帳簿を付け正しい申告を行うことを約束することで、いくつかの特典が認められています。平成26年からは白色申告であってもある程度の記帳が義務付けられることになり、青色申告を選ばない手はないでしょう。
青色申告はその事業規模に応じて適用できる特典に差があります。その形式基準は以下のとおり。
貸家 | 共同住宅 | 駐車場 | |
事業的規模 | 5棟以上 | 10室以上 | 50台以上 |
事業的規模以外 | 上記未満 |
(1) 事業的規模の場合の特典
① 青色申告特別控除
「複式簿記による記帳」「貸借対照表の添付」を条件に所得から65万円を控除することができます。これは所得に応じ9.75万円~32.5万円の税額に相当します。
② 青色事業専従者給与
不動産賃貸業に従事させることで配偶者や親、15歳以上の子など生計一親族に給与を支払うことができます。給与は経費になりますが、事業専従者は給与所得として所得税が課され扶養親族にもできませんので、給与額の設定には慎重を期す必要があります。(要事前届出)
③ 純損失の繰越し
空室の増加や多額の修繕費の発生により、赤字となってしまうことも考えられます。不動産所得の損失(赤字)の金額は給与所得など他の所得と通算(相殺)することができますが、通算してもなおマイナスである場合には、青色申告に限ってそのマイナス(欠損金)を翌年以後最長3年間に繰り越すことができます。
④ 少額減価償却資産の全額経費算入
固定資産を購入した場合には、原則としてその取得価額を耐用年数にわたって減価償却により経費化していくことになります。しかし、青色申告であれば30万円未満の資産については一括してその取得年の経費にすることができます(年総額300万円が限度)。
(2) 事業的規模以外の場合の特典
(1)の事業的規模の場合の特典のうち、①、③、④について認められます。ただし、①青色申告特別控除の金額は10万円が限度となります。
※なお、青色申告を行うためには、確定申告を行う前年の3月15日まで(新たに事業を開始した場合には原則として事業開始日から2か月以内)に承認の申請をしなければなりませんので注意が必要です。
◆未払いの固定資産税等を経費に
不動産所得の計算は発生主義により行わなければなりません。つまり、未収賃料などがあれば収入に計上しなければならず、逆に未払いの経費があれば費用に計上できることになります。中でも大きいのが固定資産税でしょう。固定資産税は通常4月~6月くらいに納税通知書が送られ、年4回に分割して納付します。12月末の時点で2回分しか納付していないような場合でも残りの2回分を未払経費として計上することができます。その他、クレジットカード払いの経費や公共料金、年末に実施した修繕費など、12月末までに生じた費用で支払いが翌年以降のものも未払経費とすることができます。
◆固定資産取得時に一括で経費にできるもの
アパートなどを購入した際は、本体価格の他に様々な支出を伴いますが、その支出にはその年の必要経費とされるものと、不動産の取得価額に含めるべきものとがあります。
経費にできるものは抜き出して所得を減らしましょう。
・不動産取得税
・登記費用
・印紙代
・完成お披露目の費用など・土地・建物購入建築代金
・設計変更費用
・設計料・仲介手数料
・リフォーム費用
・固定資産税等精算金など
必要経費になるもの | 取得価額になるもの |
◆減価償却期間は極力短く
建物に対し、附属設備や構築物の耐用年数は短く設定されています。したがって、取得価額を建物としてまとめて減価償却費の計算をするよりも、附属設備等を区分して計算した方が、年間の減価償却費が増えることとなります。
◆給与を支給
前述した青色事業専従者給与等を除き、生計一親族に支給した給与を経費とすることはできません。逆に、生計別であれば認められることになります。例えば、実家の親などに業務の対価として支払った給与なら経費となります。