平成24年4月号
税制改正 ~結局のところどう変わった?どう変わる?~
3月30日、平成24年度税制改正法案が無事国会で成立しました。昨年度の改正法案は年度内に成立させることができず、分離後一部を諦めた上で、11月30日に漸く成立していました。本年度も難航が予想されていましたが、平成24年度の税制改正では、最初から通り易いものだけを改正法案としてまとめ、消費税や相続税増税など議論のあるものは別法案として国会に提出することで混乱を最小限にしようと考えたようです。震災の影響もあったとはいえ、この1年間にバラバラと国会に提出された法案は、大きなものだけでも5本です。
何がどう変わったのか?どう変えようとしているのか?資産税に関係しそうなところだけでも整理してみたいと思います。
相 続 税 |
◆未確定法案
平成23年度税制改正法案に盛り込まれ不成立となっていた内容が、そのまま社会保障・税一体改革法案に再度盛り込まれました。平成27年1月1日以降の相続について、基礎控除額を現行制度の4割減(3,000万円+1,000万円×法定相続人の数)、最高税率を現行の50%から55%へ引き上げ、生命保険金の非課税金額を縮小、など増税一色です。相続税制は、平成22年度改正以降、富裕層はもとより中流層をも相続税課税のターゲットとしています。都内に不動産を所有している方など、新たに相続税対象となるケースが増えると予想されます。
贈 与 税 |
◆確定
平成24年度税制改正で、住宅取得等資金の非課税制度が延長・拡充されました。平成24年分の親や祖父からの住宅購入資金の贈与については、平成23年分同様1,000万円まで非課税となります。また、省エネ・耐震住宅に該当すれば、プラス500万円となります。
◆未確定法案
相続税同様、平成27年1月1日以降の贈与について、最高税率は50%から55%に引き上げられますが、親や祖父等からの贈与については一般の贈与に比較して税負担が緩和されます。例えば、年間2,000の贈与を受けた場合、通常は720万円の贈与税が課されますが、贈与者が親や祖父等の場合には、585.5万円となります。
一方、相続時精算課税制度では、贈与者の範囲に祖父等が追加され、その贈与者の年齢も「65歳以上」から「60歳以上」に引き下げられます。贈与税については、貯蓄率の高い高齢世代から現役世代への早期の資金移転による経済活性化などの観点から減税傾向にあるようです。
譲 渡 税 |
◆確定
事業用・居住用ともに買換え特例制度が平成24年1月1日以降の譲渡について縮小されました。まず特定の居住用財産の買換え特例制度は、譲渡価額の上限が1.5億円(改正前2億円)に引き下げられました。同制度は、比較的譲渡価額が大きい場合に選択することが多いことから、その上限が引き下げは適用頻度を大きく減少させることになると思われます。
なお、譲渡損失が生じた場合の損益通算・繰越控除制度は2年間の単純延長となりました。
一方、特定事業用資産の買換え特例制度は更に厳しいものとなりました。同制度は平成23年6月成立のいわゆる整備法で適用範囲が縮小されていましたが、更に平成24年度改正で一番使い勝手が良かった10年超所有土地建物等を譲渡した場合の特例について、買換資産が土地等である場合には、その面積が300㎡以上の一定のものに限定され、原則として駐車場は除外となりました。区分所有マンションの敷地権やアパート等の敷地などでの利用は限定的なものとなるでしょう。
所 得 税 |
◆確定
平成23年度改正で成立しなかった給与所得者に対する増税の一部が平成24年度改正で成立しました。今まで青天井で認められていた給与所得控除額が、平成25年分以後は最大245万円とされ、年収1,500万円を超える給与所得者が影響を受けることとなります。また、震災復興税として平成25年から25年間、所得税額が2.1%増となります。
◆未確定法案
平成27年分より課税所得5,000万円超の部分の税率が45%(現行40%)となります。
法 人 税 |
◆確定
平成23年度改正により、30%(中小企業の所得800万円以下18%)の税率が25.5%(同15%)に引き下げられました。一方、震災復興税の影響で当初3年間は28.05%(同16.5%)となります。なお、今後も国際競争力の観点から法人税率引き下げ、逆に所得税増税が予想されることから、法人を利用した所得税・相続税対策の重要性が増すと思われます。